キズナ~私たちを繋ぐもの~
嫌な予感を抱えながら病室の前まで向かうと、後ろから司がやってくる。
「綾乃、どうだ」
「今、……入るとこ」
ためらう私の脇から、司が手を伸ばして扉を開ける。
一気に開いた視界は、なぜだか真っ白く見えた。
「アヤ」
兄の声が聞こえて、もう一度目を凝らすと、ようやく形が見えてきた。
白い病室と白いベッド、白衣を着た医師、看護師さんが点滴を片づけている隣で、こちらを振り向いている兄の姿。
足を一歩踏み入れると、もっと良く見えた。
白く、目をつぶったまま薄くほほ笑んだ母の顔。
「……寝てるの?」
「いや、……遅かった」
兄は拳を握りしめて、私から目をそらした。