キズナ~私たちを繋ぐもの~
私は司の手から逃げるように前へと歩き出した。
段々と近付く、ベッド上の母。
近付けば近付くほど、その生気の無さに、ずっと昔の記憶がよみがえる。
悲惨とも言える状態で横たわる父の姿。
顔の半分が焼けただれていて、見るに堪えなかった。
母の遺体は綺麗なのに、なぜだかあの姿にとても良く似ているように思えた。
「……い、や」
言葉と共に、冷や汗が吹き出してくる。
体が震えて止まらない。
突然、私を保っていた糸のような何かが切れた。
目の前に父の死に顔がちらつく。
私は固く目をつぶっているのに、それは少しも消えない。
「いやぁぁぁぁぁ」
絶叫ともいえる声を聞いて、司が後ろから私を抱きしめた。
それでも止まらなかった。
むしろ、変に生暖かい体温が空恐ろしくて、私は必死で彼の腕から逃れた。