キズナ~私たちを繋ぐもの~
ああ、お兄ちゃんだ。
そう、思った。
自然に胸に広がっていく安心感。
8歳のあの日からずっと、私にとって安らぎは、兄と共にあったんだ。
ようやく父の死に顔が消え、目の前の兄の姿が見えた。
「……どうしよう。お兄ちゃん」
「大丈夫」
「お母さんが、……どうしよう」
「大丈夫だから。俺がいるから」
「お兄ちゃん!!」
持てうる力全てを込めて、兄の背中に腕を回した。
必死に掴んでいるそれだけが全てで、後ろにいる司が唇を噛んでいたなんて事もこの時は全然気づいていなかった。
心が壊れそうになった一瞬。
私が受け入れられるものは、兄だけだったのだ。
「大丈夫だ……」
呪文のような兄の声を聞きながら、私はゆっくり目を閉じた。
現実逃避をするように、意識をどこかへやってしまいたかった。
体の力が抜けて、意識がふわふわと浮遊している感じ。
抱きしめてくれてるのが兄であることに、ものすごく安心していた。