キズナ~私たちを繋ぐもの~
私は、どうしたいんだろう。
悩むまでもなく、答えは決まっていた。
兄と居たい。
お母さんとのこと、分かち合えるのは兄だけだもの。
「でも綾乃は倒れてますし。達雄さんも大変でしょう?」
「綾乃は俺の妹だ。大変なんて事はない。母親が死んだ今、俺たちはたった2人の家族なんだ。頼むから、ゆっくり綾乃と話をさせてほしい」
「……」
黙る司の顔が、印象的だった。
どこか、悔しさをかみしめたような顔。
私は、こんな思いをずっと司にさせていたのだろうか。
私とつき合っているのは司なのに、こんな時にまで余裕のない顔をさせるほど、不安にさせているのだろうか。
それでも今は、司を選べなかった。
こればかりは、どう説明することもできない。
二人で支え合ってきた17年間だけが、その理由を知っている。
「……司」
「綾乃、気づいたのか」
兄を押しのけるようにして司が私の前に来る。