キズナ~私たちを繋ぐもの~


私は、どうしたいんだろう。

悩むまでもなく、答えは決まっていた。

兄と居たい。
お母さんとのこと、分かち合えるのは兄だけだもの。


「でも綾乃は倒れてますし。達雄さんも大変でしょう?」

「綾乃は俺の妹だ。大変なんて事はない。母親が死んだ今、俺たちはたった2人の家族なんだ。頼むから、ゆっくり綾乃と話をさせてほしい」

「……」


黙る司の顔が、印象的だった。
どこか、悔しさをかみしめたような顔。

私は、こんな思いをずっと司にさせていたのだろうか。

私とつき合っているのは司なのに、こんな時にまで余裕のない顔をさせるほど、不安にさせているのだろうか。

それでも今は、司を選べなかった。

こればかりは、どう説明することもできない。
二人で支え合ってきた17年間だけが、その理由を知っている。


「……司」

「綾乃、気づいたのか」


兄を押しのけるようにして司が私の前に来る。

< 241 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop