キズナ~私たちを繋ぐもの~
母は、ずっと病院住まいだったから、遺品といっても大したものはない。
ただタンスの奥には、古い着物や、父との写真、結婚指輪などが大切そうに風呂敷に包まれて入っていた。
きっとこれが、母の宝物だったのだろう。
「……うわ。お母さん若い」
色あせた写真には、まだ私と同い年くらいの母が、兄より若い父と一緒に笑っていた。
こんな風に、笑えてたんだ。
すごく無邪気なその表情は、今まで一度も見た事が無い。
それに服の色も。
病室では見たことのないようなオレンジ色のブラウスだ。
写真と共に記憶を辿れば、確かに昔、母はこんな色が好きだったんだ。
明るい色の服を着て、私の手を引きながら幸せそうに笑ってた。
そんな記憶も、確かに片隅には残ってる。