キズナ~私たちを繋ぐもの~
私は急いで台所に戻り、片付けを始めた。
蛇口からまっすぐに流れおちる水を、わざと遠くにはじくように茶碗を傾ける。
知りたくない。
感じたくない。
まっすぐに落ちてくる感情を、そのまま自分の中に入れる訳にはいかない。
半ば意地になって茶碗を洗い終えたときには、流し場は水浸しだった。
私の服もエプロンも水浸しで、増えた洗濯物を悔し紛れに洗濯かごに投げ込んだ。
クリーニングから戻って来たばかりのスーツに着替え、自分も仕事に行くために鏡の前で全身をチェックする。
ふとテレビの脇に飾ってある家族写真が目に入った。
8歳の自分。制服姿の18歳の兄。仲良く腕を組む両親。
この数日後だ。
全てがおかしくなったのは。
いや、おかしくなった訳じゃない。
ずっと必死につなぎとめようとしていたのに。
それは突然に、壊れてしまったんだ。