キズナ~私たちを繋ぐもの~
『この度はなんといったらいいか。……お気の毒だったわね』
「いえ。すみません。バタバタしてしまって」
なんだか緊張する。
だってわざわざ電話してくるなんて、何の話だろう。
しばらくの沈黙の後、司のお母さんは気まずそうに声を出した。
『それでね。……言いにくいのだけど、あなたは今喪中な訳でしょう?』
「はい」
『司がこの間家に来てね、すぐにでも結婚したいと言ってきたのよ。
だけど、やっぱり時期ってものがあると思うの』
「はい」
『葬儀のすぐ後で入籍なんて、人聞きも悪いでしょう?
綾乃さんからそれとなく、司に言ってやってくれないかしら』
「はい」
『あ、反対してる訳じゃないのよ。綾乃さんをお嫁さんとして迎えるのはもう決まったことですもの。
ただ、あと、そうね1年くらい様子を見ましょう?』
「……はい」
司のお母さんの声が、紙一枚隔てたように遠くに聞こえる。
私はそれを、思いのほか冷静に聞きながら、機械のように同じ言葉を繰り返しながら聞いていた。