キズナ~私たちを繋ぐもの~
『ごめんなさいね。あなたの辛い時期に。
でもほら、司にもお仕事のお付き合いとかあるから、儀礼的な事はきちんとしないとね』
「分かってます。……分かりました。私から司さんには伝えます」
『そう。ありがとう、綾乃さん。
あなたとだったら、私上手くやっていけそうで安心だわ』
「……いえ。失礼します」
私は早々に話をまとめて電話を切った。
胸がギュッと詰まって苦しい。
それでいて、心のどこかはそれを冷静に受け止めていた。
司は、優しい。
少し強引なところは確かにあるけど、私を思ってくれる気持ちは本当なんだと思う。
だから私はいつだって、司に甘える事が出来た。
本当はどこかで、今回も甘えてしまおうかと思っていた。
でも、甘えていては駄目なんだ。
司のお母さんが言う事は正しい。
色々な意味で、私たちの結婚は性急過ぎる。
司は私を信用できないがために焦っているし、
私は兄を忘れたくて司にすがっている。