キズナ~私たちを繋ぐもの~

  
 その後、私は会社に電話をかけた。


「あ、西崎ですけど」


電話の向こうは、私と同じ受付嬢。
他愛のない話を少しした後で、人事部へと電話を回してもらう。


「いえ。あの色々葬儀の際はありがとうございました。それで、あの急で申し訳ないのですが」


私は息を吸い込んで、静かな決意をそっと吐き出す。


「今月で、退職したいと思っています」


電話口から聞こえる、驚いたような声。
理由を尋ねる声に、「気持ちの整理をしたいから」と伝える。

時期が時期だから、あまり追及はされなかった。
軽く引きとめられたけれど、お義理のようなものだろう。

受付嬢なんていくらでも代わりはいる。
何も私でなければならない必要なんてないのだ。



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