キズナ~私たちを繋ぐもの~
兄は、毎日会社が終わるとすぐ帰ってきた。
「綾乃、ただいま」
「お帰りなさい」
エプロンをつけて迎えに出ると、穏やかな笑顔を向けてくれる。
なんだか昔に戻ったみたいだ。
一緒に夕食を食べて、片付けをして。
その日あった話を聞かせてもらって、それぞれの部屋に入る。
別れて暮らす前には当たり前だった事が、今はとても嬉しい。
兄と二人で暮らした日々は、こんなにも愛しいものだったんだ。
部屋に入る頃、必ず司から電話がかかってきた。
『綾乃。早く、戻ってこないか』
「司……」
『寂しいんだよ』
ポツリと呟く彼の声に、申し訳なさとありがたさがこみ上げてくる。
その後司は、ポツリポツリと会社の話をしてくれた。
私の気を紛らわせようと、敢えて楽しい話題を選んでくれているのが分かる。
私は、その声を忘れないようにしっかり聞いた後、意を決して話しかけた。