キズナ~私たちを繋ぐもの~
 
 そんな風に、日々は過ぎた。

兄に気づかれないように、退職の手続きを進め、
休みの日には誰も知らないよう街へ行き、その街並みを眺めてきた。

そして、司との約束の日。

駅前でいつものようにデパートで待っていると、携帯電話が鳴る。
外に出れば道路に横づけしてある車から、司が手を振る。


「司」

「綾乃。……なんだか久しぶりだ。会いたかったよ」

「……うん」

「どこに行く? 乗れよ」


いつものように、彼は私を車へと招こうとする。
私は首を振って、それを制した。


「ううん。ちょっと話があるから歩かない?」

「話……?」


司は軽く眉根を寄せた。
勘のいい彼には、きっと良くない話だと言う事は分かるのだろう。

< 256 / 406 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop