キズナ~私たちを繋ぐもの~
そんな風に、日々は過ぎた。
兄に気づかれないように、退職の手続きを進め、
休みの日には誰も知らないよう街へ行き、その街並みを眺めてきた。
そして、司との約束の日。
駅前でいつものようにデパートで待っていると、携帯電話が鳴る。
外に出れば道路に横づけしてある車から、司が手を振る。
「司」
「綾乃。……なんだか久しぶりだ。会いたかったよ」
「……うん」
「どこに行く? 乗れよ」
いつものように、彼は私を車へと招こうとする。
私は首を振って、それを制した。
「ううん。ちょっと話があるから歩かない?」
「話……?」
司は軽く眉根を寄せた。
勘のいい彼には、きっと良くない話だと言う事は分かるのだろう。