キズナ~私たちを繋ぐもの~
「どういう事だよ」
「私、司とは結婚できない」
「綾乃」
「司には釣り合わないもの。それに、あなたを一番に好きじゃないなら、結果として傷つける事になる」
「それは今の話だろ。ずっと一緒にいれば、いずれは達雄さんより俺の方を見る。……違うか?」
「それをあなたはどんな気持ちで待つつもりなの」
司の頬が、一瞬引くついたのが分かった。
「お義母さんが死んだからか?」
「え?」
「家族でいなきゃいけない意味が無くなったから、達雄さんが綾乃を自分のものにした。……そういう事なんじゃないのか?」
「違う。お兄ちゃんは本当に関係ないの。私が、自分で決めたの」
「じゃあ、綾乃がそう思ってるのか。達雄さんとどうにかなっても、お義母さんが見てる訳じゃないもんな。今ならどうとでもなれる」
「司!」
思わず手が出ていた。
私は、司の頬を打った自分の手を、信じられない思いで見つめた。