キズナ~私たちを繋ぐもの~
「綾乃」
すれ違いざま、彼が呼ぶ。
「なに?」
「良く考えてくれ。本当にこれでいいのか」
「……考えたよ」
「俺は、待ってるから」
いつだったか、別れを告げた時も司はそう言った。
そして、私はその彼にすがるように助けを求めたんだ。
彼は、私がまだその時の弱さを持っていると思っているのだろうか。
「今度はもう、戻らないよ」
そう言って、次に続く言葉を聞く前に彼の脇を通り抜けた。
この強がりを、どこまで信じてくれるのだろう。
追ってくるかと思ったけど、彼は追ってはこなかった。
外に出れば北風が吹きつけて、一層寒さが身にしみる。
これでいい。
今度はそう思えた。
もう、司を巻き込むのはやめよう。
強くなるんだ。
兄を、解放してあげるために。