キズナ~私たちを繋ぐもの~

 着替えるために部屋に入った時、ふと、ジュエリーケースが目に付いた。

母の葬儀の際、真珠のネックレスが必要だろうと、他のものと一緒に司が持ってきてくれたものだ。
指輪が無くなったことで、ケースの一ヶ所が空いている。


「なんか、不格好」


小さな笑いはどこか自虐的に響く。

心にも一つ空洞が空いたみたい。

でもそれは必要な空洞で、私はこれから自分でその穴を埋めて行かないといけない。


ジュエリーケースには、兄がくれたピアスも入っている。
私は今つけているピアスとそれをと取り換えた。


鏡に、耳元で揺れる青色の煌めきがうつる。

見ているとなんだか惑わされてしまいそうだ。
兄のぬくもりを感じているような気分になる。


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