キズナ~私たちを繋ぐもの~


「今までありがとうございました」


静かな声で深々と礼をする兄に、母も父も「頭をあげてくれ」と懇願していた。

兄と両親の話は、難しい言葉で話されていて、幼い自分には分からない事ばかりだった。

その中で、自分なりに理解ができたのは、兄が本当のこの家の子供では無いこと。

そして、18歳を迎えた今、高校を卒業したら出ていくつもりだということ。


幼い私にとって、これはショックな内容だった。

兄が本当の肉親ではない。
その事よりも、兄が出て行きたいと、そう思ってることが耐えられなかった。


学校の話を聞いてくれる、宿題を見てくれる、お風呂上がりの髪を一緒に乾かしてくれる。

私にとって兄は、他の友達の兄弟よりも優しい、大事なかけがえのない存在だった。

そんな兄が居なくなる。
そう思っただけで視界は緩み、涙があふれ出してきた。


「いやだよ……」


思わず呟くと、兄と両親が一斉にこちらを見た。


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