キズナ~私たちを繋ぐもの~
クローゼットの奥に隠しておいたボストンバックを取り出し、中から以前兄にもらったピアスを出した。
これも持って行くつもりだった。
せめてもの、兄との思い出に。
だけど、違う。
きっと持って行ってはいけないんだ。
私は片付いた机の上にピアスを乗せ、兄への手紙を書いた。
やがて兄が部屋に入った音が聞こえたので、もう鉢合わせすることもないだろうと、シャワーを浴びるために自分の部屋を出た。
ゆっくりと温かいお湯につかり、お化粧も整髪料も落として、さっぱりした状態で廊下を戻る。
兄の部屋は静かで、物音ひとつしなかった。
明かりも漏れてないところを見れば、もう寝てしまったのだろう。
私は、その扉の前に立って、そっと額を当てた。
お兄ちゃんと暮らした日々。
泣かせてくれる腕。
心配そうに見つめる瞳。
何があっても、お兄ちゃんがいつかはなんとかしてくれるのだと、
そう思えるほどの安心感。
もらったたくさんのものが、
宝石みたいにキラキラと、私の胸の宝箱にしまわれてる。