キズナ~私たちを繋ぐもの~
私とあなた
私が新しい駅に降り立った時、携帯電話が鳴った。
まだ朝の早い時間だ。
飲み会の日は遅く起きても兄は怒らない。
だからまだ、兄が気づくはずはないのに。
そう思ってディスプレイを見ると、そこには司の名前が書いてあった。
しばらく話もしてなかったのに、どうして今更電話なんてかけてくるんだろう。
私がでるのにためらっていると、やがて電話は切れた。
まだ不動産も開かない時間なので、どうしようかと迷っていると再び電話が鳴る。
やはり司からで、10コールも鳴らすと再び切れた。
そして次に、メールの着信音が鳴る。
『母から聞いた。
もしそれが原因で別れたいと思ったのなら
やり直したい』
葬儀の後にかかってきた、あの電話の事を言っているのだろうか。
実家に行って、もしかしたらお母さんと口論にでもなったのかも知れない。
そう考えると、放っておくのは申し訳ないような気がした。