キズナ~私たちを繋ぐもの~
母の意識が戻ったのは、葬儀が済んでから1ヶ月後のことだった。
何もかも知らないうちに、夫が死に、その葬儀や何もかもが全て片付いてしまったことが、母はショックだったのだろう。
長く続く入院生活に、次第に精神を病んでいった。
心が弱れば体の回復も進まない。
結局それからの人生の大半を、母は病院で過ごしている。
皮肉なものだけど、父の保険金が無かったらやっていけなかっただろう。
それから、まだ8歳だった私の面倒を見てくれたのは兄。
毎日ご飯を作って、母親の病院に連れて行ってくれた。
学校で使う雑巾だって、新しい運動靴だって、皆兄が用意してくれた。
恥ずかしいけど、初潮の世話をしてくれたのだって、兄だ。
母が退院できたのは、私が中学に上がる頃。
けれども、精神も体調も完全には戻らず、数ヶ月おきに入院するような日々を送っていた。