キズナ~私たちを繋ぐもの~


……兄は、本当はあの時この家を出ていればよかったんだと思う。
そうすれば、こんな苦労はしなくて済んだ。

10歳も年下の妹の面倒を見ながら、仕事を見つけ親の世話もする。

それが血のつながりもないと言うのだから、やってられないだろう。

お陰で34歳の今でも独身。

恋人はいるけれど、今だ結婚すると言う話も出ない。
いつだって、私の心配ばかりして――――


「……お兄ちゃん」


本当は言えばいい。

「もう大丈夫だよ」って。

母親の面倒は、私がみれない訳じゃない。
仕事だってしてるし、もし兄が居なくてもきっとなんとかなるだろう。

何より私にはその義務がある。
血のつながった、実の娘なのだから。

でも、兄には本当は義務は無い。
幸せになるべきだし、私もそう願うべきなんだ。
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