キズナ~私たちを繋ぐもの~
台所からはいい匂いがする。
おかゆの他に、オムレツやサラダなんかが並べてあった。
「食べれるのだけでいいから」
「ああ。大丈夫。具合が悪い訳じゃないんだ。疲れてただけで」
箸を持って、向い合せに座る。
「デートはどうだったんだ?」
そう聞いた俺に、綾乃は諌めるような視線を投げ、静かに手を合わせる。
「いただきます」
「あ、……いただきます」
食事の前にちゃんと挨拶をしろと、口を酸っぱくして言ったのはこの俺だ。
慌てて手を合わせた後、質問に答えてもらおうと、もう一度綾乃を見た。
すると綾乃は手を伸ばして、俺の右手をギュッと握った。
突然のことに心臓がドキッとする。