キズナ~私たちを繋ぐもの~
「……アヤ?」
「ふふ。やっぱりお兄ちゃんの方が大きい」
「綾乃?」
「なんか、緊張しちゃった。何話していいかわかんないし。お兄ちゃんの顔見たらほっとした」
「そ、そうか」
綾乃の安心したような顔を見て、胃の痛みが治まってくる。
でも手は握ったんだな、と思うと今度は腹が痛い。
俺はとにかく何かを口に入れようと、無理やりにサラダのキュウリを突っ込んだ。
「ねぇ。お兄ちゃん。明日はお母さんのお見舞い行くんだったよね」
「ああ」
「じゃあ帰りに買物行こうよ」
「ああ、いいぞ」
「明日のご飯なんにしようかなぁ」
そう言って笑う綾乃の顔は、いつも見る妹のそれで、
日常の空気が漂いだしてきたことで、ようやく俺も落ち着いてきた。
思えばこれが、綾乃を女として意識した最初の時だったのだろう。
けれどもこの時の俺はまだ、そこまでは気付いていなかったのだ。
【fin.】