キズナ~私たちを繋ぐもの~


「今日、飲みに行こうぜ、帰り」

「あー、でも、遅くなりたくはないな。二日続けて遅いと妹が心細がるから」

「……ホントにシスコンだな」


呆れたように英治が言う。

そうかも知れない。
妹、と言うよりは娘のような感じもする。

心配で放っておけない。
心細そうに見られると居てもたってもいられなくなる。


「それじゃあ、お前、一生結婚できねぇぞ」


英治が笑いながら自分の部署の方へ向かった。


俺は溜息をまた一つついて、今日回る仕事先のリストを確認する。

パラパラとめくっても、あまり頭には入ってこない。


『結婚』


昔はあれだけ憧れを抱いていたのに、今じゃその言葉を思い出しもしない。


確か、高校の頃だったよな。

なりふり構わず一人の人を好きだと思ったのは。

リストを眺めるふりをして、俺はその頃の自分に思いを馳せた。

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