キズナ~私たちを繋ぐもの~
後はその繰り返し。
だけど、20歳を過ぎた頃から自分でも怖くなってきた。
兄より好きになれる人には出会えない。
それは自分の理想が高いからだと、必死に自分に言い聞かせてた。
兄に対する感情を、必死に家族愛だと信じながら、
それだけで収まらない危うさをどう扱っていいのか分からなかった。
そして、就職して3年目の春。
今の恋人である司に出会った。
私は会社で受付嬢をしている。
だから仕事でうちの会社を訪れる彼の事は知っていた。
何度か取り次ぎを頼まれた事もある。
彼は兄とも仕事上の面識があったらしく、私を迎えに来てくれた兄と会社の前で談笑していた。
「お兄ちゃん、お待たせ」
「おう、綾乃。こちら藪川商事の里中さん」
「知ってる。……兄とお知り合いだったんですか? いつもお世話になっております」
「いや、こちらこそ。そうなんだ。西崎さんの妹さん?」