キズナ~私たちを繋ぐもの~
歩き出して駅に出ると、小学生くらいの子供が母親と手をつないで歩いている。
綾乃があれくらいの頃、よく手をつなぎたがった。
まだ10代の俺は恥ずかしくて、少し離れて歩けよって言った時もあったな。
次々と、浮かび上がる思い出は、
優しく穏やかで、胸を締め付ける。
なあ。
愛してるよ。
小さな頃も
大きくなっても。
お前は俺の宝物だったんだ。
だから大切に、ずっと大切にしまっておきたかった。
でもお前は、それが嫌だったんだよな。
自分の意志を持って、一人の女として生きたかったんだよな。
電車がホームに滑り込んでいく。
その風に吹かれて、乱れた髪を掌で撫でつける。
俺も、決意を決めて迎えに行こう。
そして告げよう。
一人の男として
一人の女としての君を
誰よりも愛している、と。
【fin.】