キズナ~私たちを繋ぐもの~
司くんは、近付く俺たちに気付くと、軽く手をあげた。
綾乃は体をこわばらせて一瞬彼をじっと見た後、恐る恐る声をだした。
「司。……元気だった?」
「……ひさしぶり。綾乃」
司くんの返した表情は笑顔。
それにより、綾乃の緊張が一気に解けたのが分かった。
俺はそれを眺めながら、改めて彼の懐の深さを思う。
そして、綾乃を楽にしてあげれる彼を、少しばかり恨めしく思ってしまうのだ。
綾乃は迷いもなく彼の向かいに腰をかけたので、俺は綾乃の隣に座ろうとした。
しかし、司くんからは容赦のない言葉が返ってくる。
「達雄さん、しばらく綾乃と二人きりで話させてくださいよ。邪魔です」
「おいおい」
「大体ずるいんですよ。結婚までこぎつけてから俺に話すなんて。
別にもう何もしませんから、ちょっとあっち行っててください」
ここまで言われて、この場に居残れる図々しい男がいるとしたら見てみたい。
俺には無理だ。
仕方がなく、苦笑したままカウンターの方に向かう。
不思議顔のオーナーの視線が痛い。
聞かないでください、詳しい事は。