キズナ~私たちを繋ぐもの~
「今日は可愛い子連れてたのに、君のじゃないんだ」
「いや、俺のです。結婚したんで」
「へえ」
作家先生は目を細めて綾乃の方を見やる。
「ええと、……相川さんは? ご結婚は?」
「してるよ」
その言葉にホッとする。
けれども、今だ綾乃を見ている目つきがどうにも嫌で、何だか落ち着かない。
なんとなく喉が渇いて、カウンター内に目をやる。
まだオーナーが戻ってきていないので、年配のバーテンダーにウーロン茶を頼む。
モノがモノだけに、それはすごい速さで出てきた。
自分のグラスを傾けながら、相川さんのグラスを見る。
美しい琥珀色の液体。
同じ茶色系でも、俺のものとは絶対にアルコール度数が違うだろう。
「何飲んでるんですか?」
「バーボン。おいしいよ君も飲む?」
「イヤ、俺は今日車なんで」
「折角バーに来るのに車で来るなんてなぁ」
ははは、と笑う。