キズナ~私たちを繋ぐもの~

「酔うと何するか分かんないんですよ」


口をついて出たのは本音だ。

常々、酔うたびにロクなことをしない。

最近では反省し出来るだけ飲まないようにしている。
特に綾乃を連れているときには。

相川さんとの雑談は続く。

意外にも愛妻家である彼とは話が合った。

最初よりもずっと親近感を感じていると、オーナーが戻ってきて、相川さんは彼に空になったグラスをつきだした。


「ああ」

オーナーはグラスを受け取り微笑む。

あまり会話が無くても話が進んでいくのは、
親しさの現れなんだろう。

少しばかりその場に混じれたような気がして、何だか嬉しかった。

そんな浮かれた気分のまま、テーブル内の二人に視線をむけると。

なんてことだろう。

微笑み合う綾乃と司くんの手はつながれている。

いや、一般的にあれは握手だ。

でも、俺からすれば生きた心地のしなくなる光景。

一気に気は動転するものの、手のうちにあるグラスの冷たさに、少しだけ理性を取り戻す。

一口、口に含むと、冷たい液体が俺の体熱を冷ますかのように、スッと喉を通って行った。


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