キズナ~私たちを繋ぐもの~

やがて兄も乗り込んできて、運転しながらポツリと言った。


「彼は里中司くん。
俺より若かったと思うけど、お前よりは年上かな。真面目で優しい男だと思う。
……もしかしたらお前には合うかも知れないな」


その言葉に、胸は痛かった。
突き放されたような感じがして、この世で一人ぼっちのような気がして。

だけど、兄が言うならそうなのかも知れないとも思った。


 だから数日後、司が返事を聞きにわざわざ会社にやってきた時、ためらいながらも頷いた。

何度か会ううちに、兄の言う事は正しかったんだと思った。

司は優しくて、気が利いて、私を追い詰めない。

一緒にいて、彼ほど楽だと思える人は今まで出会ったことが無かった。

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