キズナ~私たちを繋ぐもの~
母と私
17時半が退社の時間。
受付嬢である私は、大抵時間きっかりに仕事が終わる。
一日中貼りつけたような笑顔を作っていたから、顔がこわばってる気がする。
化粧を直そうと、化粧室に向かった。
今日は寝不足だから肌が荒れててノリが悪い。
いくら直しても、これでいいというメイクにはならなかった。
兄が迎えに来る。
そう思うと、落ち着かない。
口紅を塗ろうとして、指先が小刻みに震えているのに気づく。
「落ち着こう、私」
兄相手にドキドキしたって不毛だ。
そう思わなきゃ駄目。
今更、私と兄の関係が変わる訳が無い事は分かり切っている。