キズナ~私たちを繋ぐもの~


 考えに沈みこんでいるところで、携帯電話が鳴った。


【ビル前に路駐中!】


兄からのメールだ。

簡潔な内容に小さな笑いが漏れる。
手早く化粧ポーチをカバンにしまい、化粧室を後にした。

会社を出てすぐの道路に兄のグレーの車が止まっていた。

私の姿を見つけると助手席の窓を開けて、「早く乗れよ」と声をかけられる。

窓枠から顔を出す兄を見て、ホッとする。
自然に笑顔になって、「おまたせ」と声をかけた。

まるで恋人同士みたいだと、考えてしまう私はやっぱりおかしい。


「遅かったな」

「ちょっとだけでしょ。化粧直ししてたんだもん」

「へぇ。どこか変わったか?」

「失礼! そんな事言ってると女の人に嫌われるよ」

「はは。大丈夫だよ」


どこか余裕の発言は、恋人への信頼なんだろうか。
胸がうずくのが嫌だ。
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