キズナ~私たちを繋ぐもの~
「お母さん、どうしたの点滴」
「ちょっと、食欲が落ちて食べれなかったら、先生が……」
「そう」
点滴なんかつけてると、すごく弱っているように見える。
元々細い体の線が、もっと細くなったような気がするのは気のせいだろうか。
「それより綾乃、昨日誕生日だったわね。おめでとう」
「あ、ありがとう」
「母さん、俺ちょっと先生と話してくるから」
私たちが話始めると、兄は気を利かせたつもりなのか病室を出て行った。
残された私と母は、ただ静かに見つめ合う。
8歳の時から母は落ち着いて家に居ない。
退院して戻ってきても寝ている事が多かったから、結局私の世話は兄がしてくれていた。
だから、母親と言っても私には遠い存在だ。
いざ二人きりになると、何を話せばいいか分からないまま、目を泳がせることしかできない。