キズナ~私たちを繋ぐもの~
彼と不安
会話も続かず、私と母は時間を持て余していた。
何もない時はテレビ。
そう思って、テレビカードを引き出しから探す。
その時、病室の扉が一度ノックされ、返事をする前に開かれた。
入ってきたのは兄。
そしてその後ろに、なぜだか司がいた。
「……司?」
「綾乃。ごめん、急に」
「下のロビーで会ったんだ。近くまで来たからと寄ってくれたらしいぞ」
「そうなの?」
その割には、彼は病室に飾る花も手土産のお菓子も持ってきていた。
時間だってまだ19時前。
彼はいつも仕事が終わるのが遅いのに。
不審な眼差しを向ける私とは視線を合わさずに、司はベッドに横になっている母に近づいた。
母の方は突然の訪問者に驚いている。