キズナ~私たちを繋ぐもの~
「はじめまして。お会いするのは初めてですね。
綾乃さんとお付き合いさせていただいている里中司と言います」
「ああ、あなたが綾乃の……」
彼氏がいるという話だけはしていたから、さも何もかも知っているように母は頷いた。
上半身を起こし、司が手渡す花束を嬉しそうに受け取る。
私はそれを眺めながら、動揺する心を押さえつけていた。
こんな風に突然に現れるのは、司には珍しい事だ。
いつだって私に確認して、何かあれば電話をくれるのに。
こっそりと携帯電話を確認した。
けれども、不在着信の表示はない。
本当に司は何の連絡もなくやってきたのだ。
ロビーをふらふらしていたなんて、一体どういうつもりで来たっていうんだろう。