キズナ~私たちを繋ぐもの~
彼は真摯な眼差しで私を見た後、息を整えて母の方を向いた。
「俺は、気にしていません。
お母さんが入院されているのも、そのお世話をすることも」
「司」
「綾乃の家族になりたいんだ。
だから、お母さんともちゃんとお話したかった。
それで、……急に来てしまって悪かったけど」
「……」
「本気だから、綾乃。ちゃんと考えて欲しいんだ」
あまりにも真剣な表情に、言葉が返せない。
昨日家に帰ってから、そんな事を考えていたというんだろうか。
私のためらいは、母の事ももちろんあるけれど、大半は兄への感情がその理由だったのに。
そう思うと申し訳なくて、でも真剣に自分の事を考えてくれる事が嬉しくもある。
胸が軋む。
私ってなんて図々しいんだろう。
司にこんなに真剣に思ってもらえるような人間じゃない。