キズナ~私たちを繋ぐもの~
「とにかく、お茶を買ってこよう。ゆっくり司くんも交えて話さないと」
兄が背中を向けて動き出す。
距離が離れるほどに焦りに似た感覚が忍び寄る。
取り残される。
置いて行かれる。
イヤだ。
「……綾乃?」
私の手は、兄のスーツの裾を掴んで引っ張っていた。
まるで子供のような仕草に、自分でも恥ずかしくなる。
兄は驚いたように私を見返した。
私は唇が震えてうまく話すこともできないまま、見上げるだけ。
「どうした? 綾乃」
「お兄ちゃん」
「……何がそんなに不安なんだ?」
私の表情からその感情を読み取ったらしく、きちんと私の方を向いて両肩に触れる。
肩に乗る手は大きくて温かくて、私は少しだけ冷静さを取り戻した。