キズナ~私たちを繋ぐもの~
「すいません。ちょっと綾乃さんお借りします」
司が母と兄に礼をして、病室の外にでる。
私の手を引かれたままどんどん進んで、休憩室までやってきた。
休憩室は、主に相部屋の人が面会する時に使う部屋で、誰でも使用できる。
もう夜だから、面会の人も殆どいないようだ。
時折出入りする人が数人いるくらいで、ずっと中にいるような人はいない。
私と司は奥の席を陣取り、向かい合わせに座った。
「綾乃」
「ん?」
「ごめんな、急に来て。怒ってるだろ」
「別に。……怒ってる訳じゃ」
「怒ってるよ」
司は声を荒げるわけでもなく、淡々とそう言う。
そう。
怒っているかもしれない。
連絡もなく、いきなり母に会いに来るなんて卑怯だと、心の片隅ではそう思ってる。