キズナ~私たちを繋ぐもの~
「週末のデート。どこに行きたい?」
「えっと」
「行きたいところに連れて行ってやるよ」
「……司」
「どこでも」
司が笑う。
優しい、穏やかな笑顔で。
苦しい思考の渦から引き揚げられて、私はホッと息をつく。
どうして司はいつもこんなに優しいんだろう。
はっきりしない私を責め立てる資格が、あなたにはあるのに。
「じゃあ、遊園地」
「遊園地?」
「うん。だめ?」
「いやいいよ。……なんか綾乃、子供みたいだな」
静かなところだと、心がざわつくから。
何も考えずに済むところに行きたかった。
騒いで無心になれるところ、こんな悩み全部忘れてしまえるところ。
週末の約束に安心したのか、司は満足そうにゆっくり立ち上がった。
「お母さん達にもご挨拶して帰るよ。
ちょっとトイレ行ってくるから、先に病室へ戻っていていくれ」
「うん」
一緒に休憩室を出て、私だけ病室の方へ向かった。