キズナ~私たちを繋ぐもの~
「綾乃」
後ろから声をかけられて、驚いて振り向くと司が立っていた。
「どうした? 入らないのか?」
「う、ううん。入る」
「なんかあったか? 目が」
「ちがう、ごみが入っただけ」
目が潤んでいるのを指摘されて、私は慌てて目をこする。
司は深く追求することもなく、さりげなくハンカチを渡してくれた。
「これ、濡れてるよ」
「ああ、さっきトイレで手を拭いたから」
「……汚い」
「こら、なんて事言うんだよ」
久しぶりに司と軽口を叩きあって、少し気分が上昇してくる。