キズナ~私たちを繋ぐもの~
「ただいま綾乃、司くんもいるのか?」
車があるから分かったんだろう、兄はそう言いながら入ってきた。
司はさっと手を離し、何事もなかったような顔で番茶が入った湯呑を触った。
「達雄さん、お帰りなさい。
夜分にすいません。送ってきたら誰もいなかったから、上がらせてもらいました」
「ああ。悪いな遅くなって。てっきり泊まってくるもんかと思ってたから」
兄はにこりと笑って荷物を置く。
「綾乃、俺にもお茶くれないか」
そう言って、私の隣に座りこむ。
その一瞬、兄の服からお化粧の香りがした。
さっきのショックも冷めやらないのに、またも心臓に矢が撃ち込まれたような痛みを感じる。
彼女と一緒に過ごしてたんだ。
私だって人の事は言えない。
言えないけど、……2人の親密さを目の当たりに見せられたようなショックを感じてる。