キズナ~私たちを繋ぐもの~
鏡の前で口紅を塗りながら、悲しいほど情けない顔をしている自分を見つめる。
司の事がこんなに大事なら、彼だけを好きになれたらよかったのに。
そう目で訴えると、鏡の中の自分も困ったように笑う。
そして自然に脳裏に浮かぶのは兄。
今の私に、兄の事を忘れるのは無理なんだろう。
「そうだ」
私は、誕生日に兄にもらったピアスを取り出した。
そして、いつもつけている目立たない金色のピアスと付け替える。
兄がくれたピアスは、銀色で綺麗なブルーの石がついていた。
シャリン、と小さい音を立てるピアスに誓いをたてる。
どうか、今日は弱い私が顔を出しませんように。
またギリギリになって司に逃げてしまわないように。
鏡の前で手を合わせて、何度もピアスに願った。