キズナ~私たちを繋ぐもの~
部屋を出て、台所に行くと兄が朝食の準備をしていた。
いつもなら休みの日は寝坊するのに。
昨日の一件があるので気まずくて、私はそろりと通り過ぎようと忍び足で歩いた。
けれども、兄は見過ごすつもりはなかったようだ。
すぐに低い声で呼び戻される。
「綾乃」
「……はい。おはよう」
「おはよう。出かける前に食べないか?」
そろりと顔をあげれば、兄からはまっすぐに寂しそうな眼差しが注がれてる。
これを無視できるほど、私は強くもなかった。
「うん」
私がそう言うと、兄は笑って箸を差しだした。
思わず笑顔を返して、受け取った箸を並べる。
まるで何もなかったかのように、私たちは朝食の支度を整えた。