親友な女
社員がまだまだ何か言いたそうな顔をしていたが、主任がオフィスに戻ってきた。

主任は自分のデスクに戻ってずっと黙ったまま座っていた部長のところに真っ直ぐ行き、何か耳打ちした。

部長は黙ってうなずいた。

「今日は大野さん、早退するから、ロッカーから大野さんの荷物持ってきてもらえる?」
主任は加奈に顔を向けていった。加奈は「はい」とすぐ返事をしたが、朝子の状況を聞きたくて、すぐには動けなかった。
そんな加奈の様子に気付いた主任は「大丈夫。大野さんを帰したら、ちゃんと説明するから」と少しぎこちない笑顔でいった。

加奈は更衣室から朝この荷物を持ってきて、主任に渡した。
主任は「ありがとう」と言って、サッサとオフィスを出て行った。

廊下から「チーン」というエレベータの音が、静かなオフィスに響いた。


「体調悪かったのかなー? 大野さん、大丈夫かな」
別の社員がしゃべり出した。

「生理かなんかかな?」

「大野さんって、メニエール病なんだよね? それがひどくなっちゃったんじゃない? 結構しんどいって言うよね」

「メニエール病ってなに?」

「なんかめまいとかが日常的にあるらしいよ。病院にも行ってるって言ってたもん」

「あの子、病気持ちだったの?」
また加奈に話が向けられた。

「そうですね。でも病院行って治るものじゃないって言ってたけど・・・最近ダイエットも始めるって言ってたから」

「あの子、年中ダイエットって言ってない?」

「・・・そうですね」

「ダイエット、ダイエットいいながら、よくオフィスでもお菓子食べてるわよねぇ(笑)」

「・・・・・・」

「いる、いる、そういう人! あの子、この間『私、あんまり食べてないのに、なんで太るんだろ~』って本気で言ってんの!」

オフィスに不快な笑い声が響く。加奈は黙ってその様子をただ見ていた。
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