先輩と僕
「あの、すげえ傾いてますよ」

なんとなく口に出てしまった。

店員はくるっと振り向くと、「このポスター?」と聞いてくる。

その顔が、なんだかあまりに悲しそうな表情で、僕は思わず笑ってしまった。

「はい、すごい傾きです...」

僕が笑いながら言うと、店員はわざとらしいため息をついて、

「じゃあ、後ろから見ててね!」

と命令してきた。

僕、客なんだけど。

まあ、ポスターの傾きを見るくらいは全然手伝うけど。

なんと言っても、この店員のおかげで、僕たちは半額にしてもらえたんだから。

「あー、あとちょっと右を下に...、あ、下げすぎっす」

僕が適当に指示を出すと、店員はちょこちょこと傾きをずらし、すぐにポスターを真っ直ぐ貼ることができた。

「ありがとう、えーと...」

店員は少し考えて、

「田島さんの妹さんのお連れさん!」

と続けた。

「長っ!」

思わずつっこむと、店員はあははっと明るく笑った。

その笑顔が、エリの笑顔とはまた違う、少し大人な、魅力的な笑顔だった。

「あ、あの、お姉さんって何歳なんですか?」

僕はなぜかいきなり年齢を聞いてしまった。
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