いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した
「眼球が縮んだ気分……」
日が差す広い場所ならまだ良かったかもしれないが、右桜たちが歩くのは鬱蒼とした森の中。
上を見れば空はあっても太陽がない。なのに周りを見渡せるほどの明るさはあった。
光と闇のコントラスト。気を抜いたぼやけた眼球で見れば吐瀉物の中みたいだ。
兄はこれに慣れろと言い、徐々に右桜も平均感覚を取り戻すが――普通になること自体が異常だった。
右桜たちはこの世界から完全に拒絶されている。普通の人が住むべき場所ではないここで、順応しつつあるのが正常な思考とはかけ離れていた。
普通でいられるものか。眼球が縮んだと思える世界を受け入れるなど到底できない。
発狂すべきところを、「そうあるべき」と脳が処理するのは順応性が高いではなく、単にもとから異常だったのか。