いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した
人間としての何かが抜けている。正常を正常と足らしめる箇所が削ぎ落ち、逆に異常を正常とする“寛大さ”がこの世界を受け入れさせる。
どう来たかも分からない。入り口が思い出せず、迷走しながらでも、自然と進むべき道だけは見えている。
森の奥へ。
導かれるように、引っ張られるように。
目に映る光景はもはや普通に思えた。アリス症候群を克服したわけではない、“越えた先に見えたもの”。
ならば、正にここは“不思議の国”だった。
かの少女が渡り歩きし世界を、双子は闊歩する。
幻想でしかなかった、童話でしかなかった、夢見ごとでしかなかった、この世界を。現実から隔離された箱庭を双子は歩く。