いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した
「兄さんも抱きしめてあげなよ。香我美は“そっちにもいる”んだから」
「……、やればお前は茶化すだろう」
右桜の性格からして、左桜が“恋人である香我美”を目の前で抱きしめたとなれば、「兄さんかわいい」とぐらいはやし立てられる。
右桜とて同じだ。同じ姿で、同じ恋人を、抱きしめ、労ることはもう先にやられてしまったが、それを左桜は茶化したりなどしない。
“どんな形であれ”、恋人を愛する形は綺麗なものなのだから。
「兄さんが照れ屋なだけだよ。茶化してもいつもみたいにクールでいればいいのに。香我美とのことになると、余計に顔を赤くするんだから」
「必要以上にお前がつっかかるからだ」
「俺のせいかな?ただ単に、兄さんは香我美に真剣な想いを寄せているだけにも思えるな。茶化す(冗談)を流せないほどに。ま、俺もそうだけどね」