いかれ帽子屋はせせら笑い、ヤンデレ双子はただ愛した


ぎゅうぅとショルダーバッグを抱く腕に力が入る。その弾みか、中から“くちゃり”と――肉が崩れた音がした。


「おい。ただでさえ腐敗が進んでいるんだから、強くはするな」


「ごめんごめん。香我美、大丈夫?」


言いながら、右桜はショルダーバッグを開けた。


まず最初に目に映ったのは黒いビニール。口を縛ってはおらず、畳まれた部分を広げれば二重構造にしてまで大切に保管してある塊が顔を出した。


顔を出した。
バックの中からとなれば比喩表現にでも用いられる物の出現だが、この場合はそのまま。


「頬肉が崩れちゃったか……」


ごめんね、とまた呟きながら、右桜はバックの中の顔を指でなぞった。


熱を当てた飴細工のように粘着する肉を元に戻そうにも、戻す指に尚ついてよりひどい結果にしかならなかった。


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