私の烏帽子さまっ!
『ただいまー。』
私は誰もいない家の中に向かって言う。
今は、午後5時。多分今日も9時まで私は家の中で一人ぼっちだ。
私の家は4人家族…だけど普段は3人。お父さんは単身赴任で県外行ってるし、お母さんも仕事が夜遅くまであるし、中学生の弟はバスケ部で夜まで練習がある。
寂しくないと言えば嘘になるが、家に1人でいるのは慣れている。慣れているが、最近ちょっとそれが苦になりつつある。何故かと言うと、人にはあまり言えないのだけれど、私には少々霊感があって、その…最近ちょっと家の中で違和感を感じてしまうからだ。
外で感じたような視線が家でも感じる。
でも鍵はちゃんと閉まっているし、ストーカー野郎が家の中にまで入るのは不可能だ。
それに私が一番視線を感じるのは私の部屋の中でもある。やっぱり外で感じた視線とは別物のような…。
私の部屋に幽霊がいるのかと思うと家に1人でいるのが苦なのだ。
うん。今自分の部屋のソファーに腰掛けてるのだけれど、現在進行形で視線を感じている。視線だけ感じるくらいなら姿が見えた方がマシな気がするよ。
『はぁ~。やっぱり怖いよ。1人ぼっち嫌だなー。』
「1人では無いぞ。私がいる。」
そう言って突然目の前に現れた平安時代の貴族ような服を纏った美青年。
『きゃああああ!!本当に姿見えたあぁぁあー!?』
嘘嘘嘘うそー!?
何で?どうして!!!?
しかも超イケメン。大きくて整った灰色の瞳とか、白い肌とか…じゃなくて!
ていうかもう頭混乱しすぎてどうすればいいか分からないーどうしようどうしよう誰か助けてタスケテ!!
「はははは!そう驚くな。いや驚かないのは無理か。」
『いやっその!!あの私幽霊苦手で、ていうか私食べてもおいしくないから!本当に駄目だから!!』
「幽霊?案ずるな私は人を襲うような低脳な幽霊ではない。妖だ。」
は?え?
『妖って…妖怪のこと?』
「うん。そうとも言うな。だから安心しろ。」
『安心できるか!!だいたい何なの妖って?いきなりそんな事言われても信じられる訳ないじゃん!新手の空き巣ですか!?』
「あきす?何だそれは。それに信じるも何も、私は事実を言ったまでだ。信じろ私を。」