紙のない手紙
「え…?」




俺は驚きながら、おそるおそる穴へと近づいていた。










「…な…なんなんだ。これは…」










そこからは顔に白い布をかけられ、白いベッドに横たわる人とその傍らでさめざめと泣いている人達が見えた。










「親父…それに…母さん…」










母はベッドにしがみつき俺の名前を連呼しながら泣き、父は呆然と母の隣に立ち尽くしていた。









「ど、どうなってんだ…」










頭の中がグラグラと揺れて、まともに考えることができない。










その時、母は寝ている人の顔にかかっている布に手をかけた。














そして、ゆっくりとその布を取った。













「うっ!」











俺は咄嗟に口を押さえていた。















そこには、誰かがいた。












いや、おそらく俺なのだろう。












だが、その顔は見るも無残な形になっており、本人ですら、自分だと判別できなかった。
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