紙のない手紙
忠時に別れを告げ、俺は道を歩き始めた。





正直、何処に行けばいいのか見当がつかなかったが、あの場所で立ち尽くしていると忠時が絡んでくると思ったからだ。








…悪い奴じゃないんだがな…









俺は苦笑しながら、掌を上に向けて、そこに何時も吸っていた煙草をイメージした。








カバンの時と同様、光が掌の上に収縮し、そこに煙草が現れた。










俺は1本取り出し、口にくわえると、空いた方の手にライターを生み出した。










「……ハァ…」








歩く俺の前に白い霞がかかる。










俺はその中に入って行き、また新しい霞と出会う。










何処に行くわけでもなく、俺はただそれを繰り返して歩いていた。
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